2019/08/01 00:15
梅雨っぽい7月。
久しぶりに、表札を手がける機会を頂戴しました。
餅は餅屋。というように、表札は表札屋の仕事だなと思うことがあり、
現在はあまり手がけてはいませんが、今回、お客様に私たちの思うところを理解をしていただいた上で、創らせていただきました。
表札は、陽や雨に当たることがあります。
私たちにとって、これが一番の壁でした。
私たちの工房では、木材があります。そして、木材を加工する機械もあります。
さらに、私は書の専門学校に通って文字の勉強してきました。
木材、加工設備、文字と表札に必要な条件がほぼ揃っていると思えたのですが、
最大のつまづきは塗料でした。
お客様の求める品質を考えると、適応する塗料を選択することになります。
専門的な業者さんからまとまった量を仕入れる。そして、その塗料を保管する。
これらのことを踏まえると、仕事として購入し続けることは、簡単ではないということが分かりました。
思い返せば、HOKUTO59は、なんでも経験してみよう!という主人のモットーを道しるべとして
9年という月日を過ごしてきました。
一時的に負債になったとしても、経験する方を選択する。
そして、時間がかかっても、お金とは違う経験から生まれる価値として自分たち返ってくると少しずつ感じる機会が増えてきた気がします。
表札について、時を経て出た答えは、最大限できるサービス(freeの意味ではなくserviceの方です)のラインを定めるということでした。
現在では、表札のご相談をいただいたら、お客様に以下のようにお伝えしています。
「設置場所は、軒下など屋根があり、表札に
直接陽や雨が当たらないということが条件です。」と。
そして、今回新たな試みとして、漆で文字を盛りあげ仕上げてみるという方法をとりました。
ヒントは、高蒔絵です。
数年前から取り組んできた漆が、ずいぶん昔に取り組んだ表札に融合するとは、思いもよらなかったのですが、
仕上がりを見て二人して満足できる結果となりました。
おまけ。
こちらは塗装前の状態。
クルミ材に錫粉で文字を盛り固めたところです。
漆に地の粉を巻きながら、思い出したのは、小学生の頃のことです。
デパートのサンリオ売り場で、キティちゃんの下絵に合わせて、リボンは赤、顔は白といった具合に砂を撒くという砂絵の体験でした。
漆やってて良かった!と、しみじみ思うのでした。